レッドスペシャルとEVHの考察

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「STARFLEETスペシャル」(右)と友人のヴォン・ヒーレン氏が製作した「フランチェン」(左)

 

ブライアン・メイの「レッドスペシャル」とエドワード・ヴァン・ヘイレンの「フランケンシュタイン」・・・

まさに対極にあるギターと言って良い。

 

両方とも見事にギタリストの個性と主張を、その構造、音、外観で表現している。

 

上のフランケンのコピー「フランチェン」は、私の親友のヴォン・ヒーレン氏があらゆる資料をかき集め、打ち込まれた25セント硬貨の発行年度まで本物を忠実に再現したものである。

もちろん、私と同様に個人的な趣味として設計や製作過程だけに生きがいを感じるタイプで、販売などは一切していない。

 

 

フランケンを、ただの奇抜なルックスのギターと思ったとしたら全く違う。 

むしろレッドスペシャルよりも設計思想は合理的で明快である。

 

エディ自ら選んだアッシュ材、ハードなアーミングに耐えるようにフロイドローズ、 計算しつくされた場所にダイレクトマウントされたES-335用のハムバッカー1個(シングルPUはダミー)、 ワンボリュームのみという明快なコントロール、そしてエディ本人がテープをぐるぐる巻いて塗装したという、自己主張の塊のようなルックス・・・

 

2本のギターの設計思想を私なりに考えてみると、

■フランケンは「組み合わせ型」 ■レッドスペシャルは「擦り合わせ型」  と言える。

 

つまり、フランケンは個々の高性能な市販部品を自分の好みでセットし、自己主張は塗装などの演出面で行っている。設計思想は自分仕様に組み付けた高性能パソコンに近い。

一方、レッドスペシャルは、ボディの構造、トレモロなど個々のパーツから配線に至るまで、全てをワンオフの高度な擦り合わせによって性能を出している。昔のバイクや自動車のような設計思想だ。

 

「組み合わせ型の」フランケンの最大のメリットは、再現性があるということだ。どこのメーカーでも、誰でも比較的容易に同じ性能のギターを作る事が可能だ。個性的な部分は塗装などのデコレーション面だけであるからだ。

逆に「摺り合せ型の」レッドスペシャルは、高度な摺り合せであるからこそ、再現性が極めて低い。忠実に再現するととんでもなく高額なギターとなってしまう。但し、オンリーワンという意味ではこれ以上のものはないであろう。

 

 

あらためて、「STARFLEET PROJECT(※1)」を聴いてみると、音のヌケが良く、パワフルで、ダイナミックで男性的なエディのフレーズに対して、ブライアンは、繊細、ソフト、フニャフニャ、女性的・・・という印象がある。この対照的なギターソロのかけ合いがたまらなく面白い。

 

エディの代名詞といえばタッピング奏法が挙げられる。そういえば、ブライアンは1973年のファーストQUEENの「Great King Rat」や1977年の「IT'S LATE」でタッピングを披露している。 エディは豪快な早弾きライトハンド・テクニックとして有名になったが、ブライアンのタッピングは流れるようなメロディの中の一部といった個性の違いも興味深い。

 

 

14歳の時にあらゆる先進性とユニークさをトライして製作したギターを、後に自分の個性にしていったブライアンに対して、自分のスタイルやテクニック、個性を確立してから計算し尽してつくったのがエディであり、スタイルや成り立ちなども全て対極的である。

 

だからこそ2人は親友なのであり、お互いを尊敬し合っているのだろう。

またこの2人のスーパーなセッションを見たいものだ。

 

   

 

(※1) 1983年にブライアン・メイとエドワード・ヴァン・ヘイレン、フィル・チェンらが集まって収録された

「STARFLEET PROJECT」。 イギリス版子供向けTV人形劇「無敵艦隊スターフリート」のテーマソングです。
ヴォーカルはもちろんブライアン。当時12インチ盤レコードで発売され、後にブライアン・メイのCD「華麗なる復活」にレット・ミー・アウトとともに収録されました。現在は新品では入手困難なので、是非ともお聴きください。  

こちらはyoutube音声で、フルバージョンです。

中盤のエディのソロはさすがに圧巻ですね。後半に、ブライアンとエディのソロのかけ合いが収録されています。

どちらがブライアンでどちらがエディかはすぐにわかります!

このバージョンを番組の挿入歌にしたら大変でしょう。番組時間の半分が主題歌で、しかもギンギンのギターソロ。子供の親から苦情が来ること間違いなしです。

 

それにしても何と楽しそうなレコーディングでしょう。 

数回の打ち合わせだけで一発で収録したような感じが伝わってきます。お互いのテクニックを競い合うといった意図は全くなく、いい意味で適当にリラックスしたソロで、2人の持ち味が十分に出ています。

 

それにしても、この正義の味方のロボット・・・ なんとなくエディのフランケンに似ているのは偶然でしょうか?

 

こちらはTV放送バージョン。ギターソロは入っていませんが、ブライアンの画像をお楽しみ下さい。

(画像の編集は関係者?? 初めて見る画像がたくさんあります)

 

このカット、ブライアンがフランケンを持って、エディがレッドスペシャルを持つという茶目っ気がほしかったですが、ブライアンは自分だけしっかりと自分のギターを持って映っています。 よほど大切にしているのか頑固なのか・・・? 色々邪推してしまうカットですね。

 

 

 

ブライアン・メイ レッドスペシャル レプリカ・コピーモデル Brian May, RedSpecial,自作・改造・製作,EVH,エドワード・ヴァン・ヘイレン,エディ

この後、ヴォン・ヒーレン氏の渋谷の作業場で、この2台を眺めながら朝まで酒を酌み交わすのであった・・・